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「そうだと睨んでたのに先越されたってことか!?」
フロアー中に響く編集長の声。
バンバンとスポーツ紙を叩いて凄まじい怒りだ。
珍しく徳さんも俺と一緒に並んでその説教を聞いていた。
「掴んでたネタ先越されるなんて情けねーな!おい!」
徳さんは何も言わない。
俺は正直居たたまれなかった。
徳さんのただの妄想だと、真面目に取材していなかった。
それでも徳さんは何も言わずに俺と一緒に編集長の怒りを浴びていた。
編集長の怒りが少し落ち着くと、徳さんは俺が撮った秋篠葵の写真を一枚デスクに出した。
「編集長、この女の地元に取材に行っていいですか?」
「はぁ?」
「クラムの秋が今まで手を出したのは業界人だけです。何でこの女なのかわからない」
「たまたまだろ」
「秋が騙されていたら?」
「はぁ?」
「この女が金目当てとか、知名度目的であれば面白くないですか?」
徳さんはそう言ってニヤニヤ笑う。
「…ネタあんのか?」
編集長が徳さんを見る。
「だから、それを探しに行くんですよ」
徳さんはそう言ってまた笑った。
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