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政界のドン、小熊一郎。
彼には隠し子が居て、それが小説家の藤野零だと言うことは業界内では周知の事実だった。
藤野零は男なのに女としての人生を歩み、小説家としても成功した。
容姿も亡くなった母親に似て整っていて、モデル顔負けの美人だ。
話題性抜群のこの男。
マスコミが手を出せないのは、バックに小熊の存在があるから。
誰もが暗黙の了解で彼のことは触れなかったのに、昨日スポーツ紙が大々的にこの事実を報じたのだ。
リーク元は明らかに小熊側。
編集長はそれに苛立ったようだ。
「編集長がご機嫌になるネタは持ってるぜ」
徳さんはそう言って内ポケットから1枚の写真を出して俺に見せた。
藤野零とその横の小柄の女が一緒に病院入ろうとしている写真だった。
「誰っすか?」
俺は藤野零の横にいる女を指差す。
「不明。ただ、グラドルスカウトマンの須賀が、藤野零の妹らしいって聞いたってさ」
「えっ?小熊にまだ隠し子が居たってことっすか?」
「いや、小熊の隠し子は藤野零だけだ」
「はぁ?」
「クラムの直のバースデーパーティーに連れてきたのが藤野零らしい。もしかしたら、二人は…」
「いやいや、この子、女でしょ?」
「藤野零は元々男だよ」
徳さんはニヤニヤ笑う。
「とりあえず突撃するから」
徳さんはそう言って煙草を灰皿に棄てた。
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