1058人が本棚に入れています
本棚に追加
/155ページ
厚みのある男らしい手に、ぎゅっと力をこめて握られると、鼓動がにわかに激しくなって、どうしていいのか判らない。
「ユウさん」
「はっ、はい」
温人は一瞬困ったような、苦しそうな目をしたあと、そっと手を離した。
「ありがとうございます。おやすみなさい」
「あ…、うん、ぉや、おやすみ」
温人はすぐに「栗原屯所」へ入って行き、間もなく電気が消された。
けれど勇士郎はしばらくその場から動くことが出来なかった。
ドキン、ドキン、と胸が鳴り続けている。
唐突に離された手が何故か寂しくて、思わず反対側の手で包み、ざわめく胸の上をそっと押さえた。
最初のコメントを投稿しよう!