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夕食が終わってから、勇士郎は温人と一緒に一本の映画を観た。有名なイタリア映画『ニュー・シネマ・パラダイス』だ。
映画監督として成功した主人公が、自分の人生に大きな影響を与えた、歳の離れた友人の死をきっかけに、映画少年であった頃の忘れがたい思い出や、青年期の美しく悲しい恋を回想しながら、映画と共にあった自分の半生を振り返るという物語だ。ユーモアと感傷と郷愁が観る者の共感を呼び、涙を誘う。
ワイン片手にリビングのソファに並んで座りながら、時々言葉を交わしたり、見入ったりしながらゆっくりと鑑賞した。
そして物語は終わりへと近づく。
それはあまりにも有名な、美しいラストシーンだった。ノスタルジックで、切なく甘美な愛のテーマ曲とともに、かつては禁じられたシーンたちが、彼らの遠く失われた輝かしい青春の日々が、雪のように、星のように、次々とスクリーンの上に浮かびあがっては消えてゆく。
「オレの大好きなところや。シーンが降ってくるみたいやろ……。すごい綺麗で、いつもここで泣きそうになる……」
「……綺麗ですね、ほんとに」
そう呟いた温人が、勇士郎の横顔を見ていたことに勇士郎は気付かない。
「せっかく買うたから、この曲もレコードプレーヤーで聴けたらええなあ」
「そうですね」
穏やかに返してくれる温人の声がとても優しくて、勇士郎はほっと息をつく。
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