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「オレな、あんまし人とおんの好きやないねん。気ぃ遣てまうし、自分のこと話すんも苦手やし、……でも温人とおるんは、なんか落ち着く」
すっかりワインに酔っている勇士郎は、潤んだ目で温人を見つめてしまっていることに気付かないまま、ふわりと笑う。温人がハッと息を呑んだことにも、苦しげに目を伏せたことにも気付かずに、ぼんやりとエンドロールを見つめていた。
温人の後押しのおかげで、辻野の結婚式を乗り切れたことで、気持ちが吹っ切れたような気がしていた。
けれど今度は、今隣にいる温人のことがとても気になり始めている。いつでもさりげなく勇士郎の心を慮ってくれる、優しい男のことが。
(でもこんなん知られたら、気持ち悪いて思われるよな、絶対……)
そう思って自分の心を戒めるのに、それでもやっぱり温人の隣は心地よくて――。
「オレな……、ほんまはな……」
ふわふわと霞みがかった頭で、勇士郎はちいさく囁くように言いながら、逞しい肩にコトリと頭を預けて、そのまま目を閉じた。
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