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それからは独りでいることを好むようになった。それが無理なら人といる時はなるべく自分の感情を無視するように努めた。それが次第に勇士郎の生き方になっていったのだ。
なのに温人に出逢ってから、そのスタイルはどんどん崩され、綻びが出始めてしまっている。
「ユウさんは気持ち悪くなんかないです。すごく、綺麗です」
今まで聞いたことのないような低い声で、温人が告げた。怖いまでに無表情なのは、きっと凄く怒っているからだ。
それが判ったとき、勇士郎の胸に、なにか温かいものが流れ込んで来るような気がした。
「……変なの、自分のこと悪く言われても、どうでもええって顔しとったのに、オレのことやったら怒るん?」
温人は決まり悪げな顔になって、またむっつりと黙り込んでしまう。
「温人は、偏見とかない人なんやな」
「……偏見っていうのも違うというか、『偏見ないです』って言うこと自体、もう上からみたいな感じがして、…俺はそういうのはあんまり好きじゃないです」
勇士郎はしばらくその言葉を噛み締めたあと、むっくりと身体を起こし、布団から出た。
「温人って、なんか、すごいな」
どこかほわんとしているようで、実は凄く鋭いし、とても思慮深い。
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