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「なんでぇ? ほんまのことやもーん……」
頭をがっしりとした肩にもたせかけて、はると…はると…、とトロンとした目で何度も呼ぶ。
すると温人は杯の残りを飲み干し、簡易テーブルの上に置くと、いきなり勇士郎のちいさな肩を包むようにして腕の中に抱いた。
「え…っ、なに」
「ユウさん、絶対、外で酒飲んだらダメですからね。ほんとに」
少し怒ったような声で温人が言う。すっぽりと腕の中に包まれて、勇士郎は酒のせいだけではなく真っ赤になった。
「打ち上げとかあるんですよね? ドラマが終わったら」
「う、打ち上げなんてせえへんよ、たぶん。二時間ドラマなんてお金ないもん」
「ほんまですか」
「ほんまや。……なんで関西弁やねん」
フフと笑うと、更にきつく、愛しげに抱き締められた。
どきどき、どきどき、と胸が激しく脈打つ。それは頬を寄せている温人の胸からも同じように伝わって来た。
「ユウさん、お願いがあるんですけど」
「な、なに?」
「この前、ユウさん抱っこして寝たら、悪い夢見ないでぐっすり眠れたんです。だから、……」
そこで言葉を止めてしまった温人に、勇士郎は熱く潤む目をぎゅっと閉じて、うん、ええよ、と言った。
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