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「ユウさん……」
温人が喉にからんだような声で低く呼ぶ。
その声にさえ感じ入って、勇士郎はぎゅっと目を瞑った。淫らな身体が恥ずかしすぎて泣きそうになる。
「き、……キライに、なってへん……?」
勇士郎がちいさく言うと、温人がいきなり強く抱き締めてきた。
「なるワケないでしょう」
少し怒ったみたいな声だ。でもそれは不思議と勇士郎を安堵させてくれる。
温人はそっと勇士郎の下着とパジャマのズボンを引き上げてくれたあと、自分も下着とズボンを元に戻して、一度ベッドを離れた。
それから濡れタオルで勇士郎の手を丁寧に拭き清めてくれたあと、今度は背中からではなく、向き合うようにして勇士郎を腕に抱いてくれた。
しばらく二人は無言だった。逞しい胸に頬を寄せてじっとしていると、温人は大きな手で勇士郎の髪や薄い背中を、そっと撫でてくれる。優しく触れられるたびに、温人を慕わしく思う気持ちがますます募って行ってしまいそうで、勇士郎は温かい腕の中でひっそりと切ない溜め息をついた。
「ユウさん…、もう眠い?」
「ううん、温人は?」
「眠くないです。なんか寝るのがもったいない気がして」
その言葉に、トクン、とまたひとつ勇士郎の胸が鳴る。温人はあまり自発的に喋る方ではないが、たまに放つ一言が、いちいち勇士郎の心を甘く揺さぶるのだ。
「ほな、なんか話しよか…、思い出話とか」
「思い出ですか」
「うん。……温人は、どんな子供やったん?」
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