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その女性が突然やって来たのは、その翌日のことだった。
玄関先で、突然の訪問を丁寧に詫びたその若い女性は、須田明日香と名乗り、温人の幼馴染だと告げた。
勇士郎は激しく動揺したが、温人が不在の今、家に入れる訳にもいかず、明日香と共に外に出た。
明日香は往きに通ってきた公園のベンチでいいと言ったが、今の季節はやぶ蚊なども多いので、近くのカフェに誘った。
二人ともコーヒーだけ注文し、緊張しながら向き合う。
「高岡、勇士郎さん、ですよね」
「はい」
「本当に、突然すみません。先日埼玉の実家に帰省したときに、温人のおばあちゃんに会ったんです。温人が今、千葉で知り合った人の所にいるらしいって聞いて、なんだか心配になってしまって」
「ああ」
勇士郎はやっと合点した。
温人と一緒に住むようになって、彼の複雑な事情を知ったとき、埼玉に住む彼の祖父母にだけは、居場所を伝えておいたほうがいいと勇士郎が勧めたため、温人は勇士郎の住所を彼らに手紙で伝えてあったのだ。
それを明日香が訊き出して、今日ここへやって来たということなのだろう。
突然の訪問者に戸惑ってはいたが、それ以上に、彼女が温人を呼び捨てにしたことにショックを受けていた。幼馴染だと言っていたが、明日香は温人の元恋人なのかもしれない。
長くまっすぐな髪に、白く張りのある若い肌、派手ではないが丁寧に化粧された顔はとても愛らしい顔立ちだ。女性らしい女性、という感じがして、勇士郎は自分よりずっと若く、魅力的な女性を前に、強い劣等感を覚えた。
なにより彼女は非常に肉感的だった。本人はそれを強調しているつもりはないのかもしれないが、薄く柔らかそうなベージュのサマーニットは、彼女の胸の大きさを十分に悟らせ、半袖から伸びた腕や手も白く、とても柔らかそうだった。綺麗に塗られた薄いピンクのマニキュアも、彼女の女らしさを存分に引き立てている。
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