路地裏の喫茶店

11/16
前へ
/16ページ
次へ
扉が閉まり、少しすると目が慣れて来たのか周りがよく見えるようになった。 そこは外の部屋とはまるで別世界だった。 床も壁も天井すら赤黒く汚れ、鼻につく不快なニオイがした。 奥には作業台があり、上には肉の塊と血のついた包丁が置いてある。 天井からは肉の塊がいくつも吊り下げられ、その血が床に滴っていた。 よく見れば、皮の剥いだ豚や鶏や犬、猫の塊だった。 それに1メートルほどの布で包まれた、人のようなものも1つ吊られていた。 部屋の隅には口の開いた小さな布袋から、細かな赤い肉片が見えた。 私は吐き気に襲われ、部屋から出ようとした。 しかし、奥の部屋からまた叫び声が聞こえた。 そこには格子付きの扉があり、声はそこから聞こえるようだった。 格子から中を覗くと、豆電球だけの薄暗く狭い部屋に、椅子に腰かけている人影と、 両サイドには何やら点滴のようなものが見えた。 部屋の中にも、キツネ目のマスターの姿はない。 一体、キツネ目のマスターは何処に行ったんだろう……。 私は不安と恐怖に苛まれながら、格子付きの扉に手をかけた。 キーっと高い音を立てながら、扉がゆっくりと開いた。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加