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クロウをこんな風に追いかけるのは初めてではない。
この商店街は細い路地が多くて迷いやすい。
小さい子供が迷い込んで、行方不明になる事もあった。
まるで、神隠しのように。
小学生だった私も友達と路地を探検して迷子になった。
不安で泣いていた私達の前に現われたのがクロウで、私達を路地裏の奥の奥へ誘った。
そこあったのは、レンガ造りのお洒落な喫茶店だった。
けれど、ママから「子供だけで、知らない店に入っちゃいけない」と言われていて、私達は店には入らずに窓から店内を覗いた。
店内には数人のお客と、熊のように大きな体でエプロンをつけたマスターらしき男性が見えた。
見た目は怖いけれど、笑うと目がなくなるほど優しい笑顔が印象的だった。
マスターは私達を歓迎してくれたけど、店にいた大人達に止められ入る事はなかった。
「お嬢ちゃん達、お店には入って来ちゃだめよ。もう少し大人になってからね」
お客はみんな厳しかったけれど、迷子になった私達を商店街までいつも送ってくれた。
私達は時々お店にやって来ては、外でクロウの遊び相手になった。
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