5人が本棚に入れています
本棚に追加
始めて店の中に入ったのは、中学生になった時。
学校の帰り道、親友の優子ちゃんを誘ってお店に来た。
クロウはどこかに遊びに行っているのか、見当たらなかった。
扉を開けると、ガランガランと低いベルの音が鳴った。
少し緊張しながら店に入ると、コーヒーのいい香りが漂ってきた。
中は思ったより広く、天井も高くて、ステンドグラスのライトが輝いて綺麗だった。
店内にはお客が何人もいたけれど、あの頃とは違い追い出される事はなかった。
「いらっしゃい。中学生になったんだね」とマスターがやって来て、お祝いにと私にミルクティーをご馳走してくれた。
温かくてほんのり甘く、少し変わった味がした。
けれど、今までに飲んだ事がないほど美味しかった。
体の弱かった優子ちゃんには、特製のグリーンティーを出してくれた。
「少し苦いけれど、元気が出てきそう」と優子ちゃんが微笑んだのを、今でも覚えている。
マスターはとても優しい人で、私と優子ちゃんは毎日のようにお店に行った。
けれど、いつの間にか行かなくなってしまった。
理由は……思い出せない。
あんなに大好きなお店だったのに。
最初のコメントを投稿しよう!