路地裏の喫茶店

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私の大好きだった、この喫茶店のミルクティー。 あの頃とは、きっと別物だろう。 早く飲んで、店を出よう。 そう思いながら、私は店の中を見渡した。 私の事を見つめていた人達は、もう何事もなく寛いでいた。 みんなおひとり様のようで、誰かと話すこともなくボーっと煙管をふかしたり、飲み物を飲んだり、無我夢中で料理を食べている人もいた。 そして、テレビを見上げながら何か独り言を呟き、時々笑っているおばあさんもいた。 私は少し気味が悪く思った。 何故なら、そのテレビは消えていて何も映っていなかったから。 すると、突然おばあさんはこちらを向き、私は咄嗟に目を反らしてしまった。 しばらくこちらを見ていたが、そのうちまた何も映ってないテレビを見始めた。 視線が外れた事に、私は安堵した。
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