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私のミルクティーは、いつ来るのだろうか。
いつの間にか、店内に漂っていた煙も不快だった甘ったるい香りも消えていた。
退屈しのぎに、私はテーブルの隅にあるメニューを見た。
そこにはコーヒー、紅茶、コーラ、ミルクティーにグリーンティー等の飲み物と、
別の欄にはバーグ、カリー、サンドと短縮された言葉が書かれていた。
バーグはきっと、ハンバーグ。
カリーはカレー。
サンドはサンドウィッチだろう。
バーグの横には、ギュウ、トン、トリと書かれていた。
けれど、その後がわからない。
ドグ、ニヤ、ネズ、天使。
最後には特製ザクロジュースと書かれていた。
天使って、何だろう……。
そう思っていると、頭上から声が聞こえ私は心臓が止まりそうになった。
「それは、とても柔らかくて味わいのあるお肉なのですよ。なかなか手に入らないんですが、この店自慢の一品なのです」
見上げると、そこには丸盆にティーカップを乗せたキツネ目のマスターが立っていた。
「すみません、おまじないに少々時間がかかってしまって」
そう言って、キツネ目のマスターは、私の前にミルクティーを置いた。
「おまじない?」
「ええ。美味しくなるおまじないですよ」
そう言って笑ったが、細く吊り上った目が怖かった。
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