路地裏の喫茶店

7/16
前へ
/16ページ
次へ
私のミルクティーは、いつ来るのだろうか。 いつの間にか、店内に漂っていた煙も不快だった甘ったるい香りも消えていた。 退屈しのぎに、私はテーブルの隅にあるメニューを見た。 そこにはコーヒー、紅茶、コーラ、ミルクティーにグリーンティー等の飲み物と、 別の欄にはバーグ、カリー、サンドと短縮された言葉が書かれていた。 バーグはきっと、ハンバーグ。 カリーはカレー。 サンドはサンドウィッチだろう。 バーグの横には、ギュウ、トン、トリと書かれていた。 けれど、その後がわからない。 ドグ、ニヤ、ネズ、天使。 最後には特製ザクロジュースと書かれていた。 天使って、何だろう……。 そう思っていると、頭上から声が聞こえ私は心臓が止まりそうになった。 「それは、とても柔らかくて味わいのあるお肉なのですよ。なかなか手に入らないんですが、この店自慢の一品なのです」 見上げると、そこには丸盆にティーカップを乗せたキツネ目のマスターが立っていた。 「すみません、おまじないに少々時間がかかってしまって」 そう言って、キツネ目のマスターは、私の前にミルクティーを置いた。 「おまじない?」 「ええ。美味しくなるおまじないですよ」 そう言って笑ったが、細く吊り上った目が怖かった。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加