路地裏の喫茶店

8/16
前へ
/16ページ
次へ
しかし、恐る恐るそのミルクティーを飲んでみると、驚く事に私が大好きだったミルクティーの味そのものだった。 「どうしました? お口に合いませんでしたか?」 キツネ目のマスターが私の様子をうかがう。 「いえ……、とても美味しいです。あの……、このミルクティーの作り方って、前のマスターから教わったんですか?」 「前のマスター? このミルクティーは、私のオリジナルなんですよ」 そう言って、キツネ目のマスターは別のテーブルに行ってしまった。 オリジナルと言っても、きっとレシピが残っていたのだろうと思った。 何故なら、今まで他の店で色々ミルクティーを飲んだけれど、同じ味には出会えなかったのだから。 私は久しぶりに、大好きなミルクティーを堪能した。 「なぁ、マスター。今日は天使の肉はないのかね?」 恰幅がよく高級そうなスーツと腕時計を身に着けた中年男性がキツネ目のマスターに声をかけた。 「今日はないんですよ。なかなか手に入らなくて。天使の肉は貴重ですから」 「仕方ないか。私も今度入手出来るように、手をまわしてみよう」 「ありがとうございます。代わりに新鮮なザクロジュースはどうです?」 「ザクロか。じゃ、それをいただくか」 「かしこまりました」 ふと、隣で座っていた高齢の女性がキツネ目のマスターに向かって手をあげた。 「マスターさん。グリーンティー、いただけるかしら?」
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加