路地裏の喫茶店

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路地裏の喫茶店

その日、ママに頼まれた洋服をクリーニング屋に預ける為、少し離れた商店街に向かった。 もっと近くに出来たばかりのクリーニング屋があるのに、ママは商店街のクリーニング屋がお気に入りらしい。 商店街には、幼い頃ママとよく買い物に来た。 野菜もお肉もお魚も、雑貨も洋服も玩具屋だってあった。 けれど、大型スーパーが近くに出来てから、商店街にはシャッターが目立つようになって、随分廃れてしまったと、私は少し悲しくなった。 頼まれ事も済んだ私は、家に帰ろうと自転車に跨ると、真っ黒な犬が私の目の前を横切って行った。 私はその黒い犬を知っていた。 それは、私がお気に入りだった喫茶店の看板犬だった雑種の黒い犬。 名前はクロウ。 艶やかな真っ黒な毛並みがカラスのようで、野良犬だったクロウはゴミ捨て場でカラスと共に餌を漁っていたらしい。 クロウは、かつて着物屋さんだった店の横の細い路地を走って行った。 私は自転車を下りて、その細い路地を覗き込む。 「クロー!」 私がそう呼ぶと、クロウは私に気づいたのか、走るのをやめてこちらを見て座った。 その姿を見て、私はクロウだと確信した。 閉店した店の横に自転車を止めると、クロウは立ち上がり私を案内するかのように路地の先へ走り出した。 私もクロウを追いかけ走った。
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