〈3羽〉

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◆◇◆◇◆  真澄が大学の学食でもっしゃもっしゃと日替わりランチのエビフライを食べていると、晴から着信があった。尻尾を咥えたまま、電話を取る。 「俺だ」  プッと切られた。と思ったら、またすぐにかかってきた。尻尾を噛み砕いて飲み込んでから、電話を取る。 「そっちがかけて来たから出てやったのに切るとは、いい度胸ですね。晴さん」 『や、詐欺かと思った。今、話しても大丈夫?』 「ええ。学食で日替わりAランチ食べてます。今日はエビフライですよ」  エビフライは不味くないが、上手くもない。もう1度頼む気にはなれない、微妙な味だった。添えられたキャベツとトマトは乾燥気味だ。  そこへ、激辛大盛りカレーセットを盆に載せた鈴井がやってきた。鈴井は晴との共通の友人の1人だった。  前の席に座っていいかと鈴井に目で聞かれたので、真澄は頷いてやって。そしてすぐさま鈴井を視界から追いやり、晴の声に耳を傾ける。 『あ、いいな。エビフライ美味しそう――じゃなくって、ステラどう? 元気? なにか困ってないか、気になって』 「ああ、一晩中ハッスルしてましたね。まったくもって元気ですよ。ご心配なく」  一晩続いた騒音を思い出して、真澄はこっそり憂鬱な気持ちになる。あれが今晩もか、と箸で添えられたトマトをグズグズと潰した。  ステラは可愛いが、そろそろ、流石に、寝たい。
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