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『あれ? それ、もう治ったと思ってたんだけどなあ……』
「普通じゃないんですか? あんなに一晩に何度も何度も……。俺は、てっきりあれが普通なのかと」
『うさぎって薄暗い方が活発だけど、わりと順応するからね。構ってアピールしても無駄だってわかったみたいで、ここ1カ月くらいは大人しかったよ。遊ぶのは、僕が寝る前の時間って決めてたし』
「そうなんですか。昨晩は、熱烈アピールでしたよ。俺が寝るのを見計らったみたいに起きだして……。正直、すごかったです」
『うーん……。それで、真澄はどうしたの?』
「徹夜で彼女の相手をしてました」
真澄はステラが暴れる度に律儀に起きだして、様子を見た。声をかけると大人しくなるのだが、手を伸ばすと木の小屋にひっこんでしまう。かといって放っておくと、ガンガンとケージを噛んだり引っかいたり、ますます煩くなっていく。
騒音云々よりも、真澄はステラの体の方を心配していた。
活発に動くわりに、うさぎの体はさほど丈夫ではない。その骨はガラスに喩えられるほど繊細で、しかも治りにくい。暴れすぎて折れたりしたらどうしようと、そればかり心配していた。
『あー、だからかも! それ、構わない方がいいよ。暴れても無視して。放置してみて』
「我慢しろと? あれだけすごいと、耐えられる自信ちょっとないですよ」
『でも、構うと余計ひどくなるから……。構ってもらえないってわかったら、そのうち大人しくなるはず。誰かに構って欲しくて暴れるんだと思うから』
「はあ、そういうもんですか……。それでよくなるなら、いくらでも耐えますが」
いくらでも、はちっぽけな見栄だ。
晴が言うのなら、そうなのだろうと真澄は思う。彼女が寝不足で嘆いている姿は、ついぞ見たことがない。
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