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〈4羽〉
火曜日――。
真澄は昼前に大学について、すぐに鈴井を探した。
探すとは言っても、鈴井は大抵講義も受けずにラウンジでぐだっていることが多いので、探すまでもない。
ラウンジはちらほら利用者はいるが、昼前ということもあり空席が目立っていた。
鈴井は窓際の丸い席にいた。肘をついて両手を組み、その上に顎を乗せている。
真澄は足音を殺し、背後からそっと鈴井に近寄った。珍しく厳めしい顔で考えをしている様子の鈴井の首を、後ろからガッと掴む。そして、おどろおどろしい低い声で囁いた。
「なにか言い遺したいことはありますか」
ギ、ギ、ギ、と鈴井は首を巡らした。その顔は青く、頬がピクピク動いている。
「そりゃもうたくさ――」
「ああ、聞くとは言ってませんがね」
「グエッ!」
真澄は容赦なくギュッと鈴井の首を掴んだ。
「ちょ、おま、シャレになんねーって!」
鈴井は両手を上げて降参の意を示す。
やれやれ、といった顔で真澄は鈴井の首から手を離した。鈴井の正面の椅子に腰かけて、頬杖をつく。
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