〈4羽〉

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 犬が約4千8百種類の味の判別ができるのに比べて、うさぎは約8千種類の味の判別ができると言われている。つまるところ、めっちゃグルメだ。人間なんて比じゃない。  もちろん同じものを与え続けたら飽きることもあるし、比較的好き嫌いもはっきりしている。しかも吐き戻しができないことから、食べ物への警戒心も強い方だ。しかも美味しくない物は絶対に口にしてくれないという頑固な性質も持っている。  長くうさぎを飼っていると、ペレットを食べてくれない、牧草を食べてくれないといった経験を味わうことになる。  棚の隅に置かれたドーム型のワラの小屋に、真澄は心を奪われてしまった。左右にはうさぎの垂れ耳を模したものまでついていて、尻尾までついている。ごろんと丸いのが可愛らしい。 ――これをステラさんにプレゼントしたら、どんな反応をしてくれるでしょうか?  すんすん匂いを嗅いで、中に入って、寝そべって、可愛くこちらを見つめてくれるに違いない。  うっかり、即決で買ってしまった。  しかし、持ち帰ってから勝手にプレゼントしていいものだろうか、大いに悩んだ。食べても安心と書いてあるが、本当に大丈夫なのかはわからない。なにしろ、与えない方がいいとも言われているホウレン草入りのおやつが多く出回っているくらいだ。油断はできない。
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