〈1羽〉

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うさぎ、うさぎ――?  真澄は思わずテレビを見た。すると、さっきのうさぎは尻を向けていた。丸い尻から、ホイップクリームのようなしっぽが生えている。 「はあ、うさぎさんですか?」 『うん、うさちゃん』  魅惑の響き、「うさちゃん」が真澄の空の頭の中で繰り返される。しかし「真澄?」と呼ばれ、我に返った。 「あなた、うさぎなんて飼ってました? ずぼらのくせに」 『ちょっと前に譲ってもらった。あと、ずぼらは卒業した』 「はあ。それで、なんでまた預かってほしいだなんて……」 『うん、実はさ――』  曰く、晴の身内に不幸があり、父方の祖父の家に行かなくてはならなくなってしまった。  祖父の家は飛行機を使い、日に数本しかない電車を乗り継ぎ、最終的に祖父の家から車で迎えに来てもらわなければならないような辺鄙な場所にある。  うさぎの心身への負担を考えると、とても一緒には連れてはいけない。だからといって、家に置いていくなどもってのほかだ。だから預かってほしい、という。 「というか、どうして俺なんですか? 探せばその辺にペットホテルとか、そういうのあるでしょう」  真澄はツーンとした声で言った。が、頬はむずむずと緩んでいる。 『僕、エキゾチックアニマルのホテルはあんま信用できないんだよね……。お店によるんだろうけど、なんか、うーん、ちょっと怖いっていうか……』  エキゾチックアニマル――犬猫以外の大体のペットはそういう括りに入る。うさぎもハムスターもリスも、モモンガもフェレットもエキゾチックアニマルだ。  日本では様々な動物が家族として人間と一緒に暮らしている。だが犬猫ほどメジャーでない動物達は、きちんとした専門店が少ないのだ。病院も、生体販売店も、ホテルも、だ。 『この辺りで唯一信用してたうさぎ専門のホテル、この間潰れちゃってさ……。だから、信用できる人に面倒見てほしいの。ねえ、お願い!』  スマホを通して訴える晴の声は切実なもので、真澄は頼られる喜びをひしひしと噛みしめる。
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