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真澄は、晴にお伺いのメールを送った。もちろん、ワラの家の写真と一緒に。
返信を待つ間、画像フォルダを開いた。鈴井にも見せた、1番最初に撮った写真をタップする。
まなじりをでれっとさせた晴が、ステラを抱いている。晴の頬は少し赤らんでいて、口元はふにゃっとしている。真澄は、そっと晴の頬を撫でた。
「ああ、なんて可愛いんでしょうか……。鈴井さんは見る目がないと思いませんか? ねえ、ステラさん」
ステラは腹這いになって、くわっと欠伸で返した。
その後すぐ、晴から、ステラにワラの小屋をあげる許可が出た。真澄はウキウキとビニールの包装を解き、木の小屋と入れ替える。
突然のことに驚いたステラは少しバタバタしていたが、いぐさに似た新鮮ないい匂いに魅かれて、すぐに中に入ってしまった。出たり入ったり、出たり登ったり、忙しない。だが気に入ってくれたように見えた。
もちろん、真澄はバシバシ写真を撮った。
後ろ姿、屋根の上に乗っている姿、耳を模した飾りを鼻先でつついている姿……。
ひとしきり堪能し、自分の夕飯を用意することにした。パラっとレタスチャーハンを作り、ダイニングテーブルでむっぐむっぐとたいらげ、食器を片づけ、奥の部屋に戻る。
そして、大変なことに気がついた。
「……屋根がない、だと?」
先ほど入れたばかりのワラの小屋。その屋根どころか壁も半分ほどない。もちろん耳型の飾りも。
ワラの小屋はステラの丈夫な歯によって、翌朝にはすっかり解体工事が済んでしまった。
悲劇的・ビフォーアフター。
〈続〉
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