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〈5羽〉
〈5羽〉
水曜日の夜――。
晴が真澄に残していった『うさぎのきもち!』の最初のページにこんなことが書いてあった。
『草食動物で捕食される側のうさぎは、臆病な生き物です。急に触ったり、大きな音をたてたりして驚かせないようにしましょう。環境の変化にも敏感です。慣れるまではあまり触らず、そっと見守ってあげましょう』
「もうそろそろ、いいですかね……」
真澄はケージの前、フローリングに寝そべってステラを見つめていた。
預かって4日目。
これまでステラに触れたのは、ご飯を与える際のほんの一瞬のことだった。
額のふわふわの毛の先を撫でるような、ステラにしてみれば触られてるかどうかもよくわからない接触だ。それでも根気強く優しく声をかけ、あまりの可愛さに撫でくりまわしたくなる本能を押さえつけ、おなかに顔を埋めたい衝動を日々堪えている。
「ステラさん」
脚をおなかの下に畳んで寛いでいたステラの目がぱっちりと開いた。
うさぎの目はほとんど白目が見えない。ステラの目はよく見ればブラウンで、まん丸の瞳孔は黒かった。顔の横に目があるために視野はかなり広いが、視力そのものはあまり良くないと言われている。その分発達しているのが聴覚だった。
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