〈5羽〉

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 ステラが鼻で重たい皿をぐいぐいと押した。隅に追いやっても気が済まないのか、前脚でカリカリと引っ掻く。 「どうしました、急に」  真澄がどんなに優しく語りかけても、ステラは胸中を語ってはくれない。ただ、暴れるばかりだった。  重たい皿を咥えて振り回しては、すのこに叩きつけている。これは不満を伝えるための行動だった。  すのこはうさぎの足に優しい樹脂プラスチックでできていて、強い衝撃を与え続ければ割れることもある。その破片が怪我に繋がりかねないと思い、真澄は皿を取り上げてみることにした。  真澄がケージの前に膝をつくと、ステラが身を乗り出してきた。じぃっと真澄を見つめ、お辞儀でもするように頭を下げる。 「……触ってもいいんですか?」  おそるおそる、真澄はステラの額に触れた。ふわふわの和毛に、思わず頬が緩む。ステラは嫌がる素振りは見せず、むしろ大人しくなった。  うさぎは抱っこが苦手な子が多い。だが撫でられるのが大好きな個体も多かった。心地好いツボを撫でれば、そのままうっとり寝てしまうこともある。 「確か、耳の付け根」     
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