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だからステラは寂しいのだ。少しの間留守にすると言ったところで、うさぎに理解できるはずもない。
晴がいつ帰って来るのかわからず、ステラはどうしようもなく不安なのかもしれなかった。小さな頭の中の怯えや心の隙間は、真澄では埋めようがない。
「大丈夫ですよ。あなたは、晴さんに愛されています。……俺はあなたが羨ましいです。だからまあ、あとちょっとの間だけ俺で我慢しておいてくださいね。そのあと、あなたは晴さんを独り占めにできるんですから」
晴に次に会えるのは6日後。時間にして144時間後。分単位にして8640分。
真澄にとっては、たったそれだけだ。1カ月以上顔を合わさないこともあったことを考えれば、次に会える日がわかるだけ良い方だ。そのはずだった。
部屋を見渡せば、晴の物が溢れている。晴の存在を強く身近に感じるほど、彼女自身に焦がれる。五感が晴を探してしまう。
「……なぜ俺が晴さんのために落ち込まなきゃなんないんですかねえ。ああ、なんだか腹が立ってきた」
真澄はスマホで晴へメッセージを綴る。
『あなたのことを考えていたら腹が立ってきました。次会ったとき覚えてなさい』
突然の宣戦布告。
満足した真澄は、その晩はぐっすりと眠った。
〈続〉
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