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〈6羽〉
〈6羽〉
木曜日――。
「晴から返事が返ってこないぃ?」
大学の食堂で、真澄と鈴井と高野が同じテーブルを囲っていた。
鈴井の言葉に、カレーを食べていた真澄は「はい」と「ふぁい」の間のような相槌を打つ。真澄の声にいつもの張りはない。鈴井はカレーの山にスプーンを突き刺したまま、真澄をしげしげと見た。
「返事がないって、いつからだよ?」
「昨日の夜からです」
「なンだ。もっとなげーこと連絡取れなくて死んでるかもってわけじゃねーんだな」
心配して損した、と鈴井はカレーを頬張った。高野もカレーを食べ進めていたが、真澄だけは福神漬けをスプーンでつつくばかり。
「まあ、確かに晴って、普段は必ず鬱陶しいスタンプとか返してくるよね」
高野の言葉に真澄は頷いた。
昨日の夜は既読すらつかなくて、今朝確認すると既読はついていた。返事はなく、スタンプもない。かといって、とくに返事が必要な内容だったわけでもなかったために、急かすように追撃もできないでいる。
「たんに葬式とか、そういうんで忙しいんじゃねーの? そこまで気にすることねーだろ。まだ半日だぞ、半日」
「まあ、そうなんですが……」
「ですが、なんだっつの。つーか、なんて送ったんだ?」
真澄はごそごそとスマホを出し、鈴井と高野にメッセージを見せた。鈴井と高野は身を乗り出して小さな画面を覗く。
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