〈6羽〉

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 高野は一瞬にして心を鷲掴みにされ、前のめりになって動画をリプレイした。きゃあきゃあときらきらしい声をあげる。  今にもテーブルを叩いて悶え倒れそうな真澄と高野を、鈴井だけが冷めた目で見ていた。 「や、可愛いっつーか、間抜けじゃね? 無表情でなに考えてんだかわかんないとこなんて、真澄そっくりじゃねーか」  動画と写真に夢中な2人に鈴井の声は届かない。2人を現実に引き戻すのを諦めた鈴井は、もそもそとカレーを食った。 「うさぎって片目ずつ瞬きするんだ! ウィンクみたい」 「流石は高野さん。どこかの誰かさんとは目の付け所が違いますね。ステラさんは頬をこちょこちょすると、なぜか前脚が動くんですよ。見てくださいよ、これ」  次に見せたのは、ステラが横になっている写真だった。真澄に頬をくすぐるように撫でられ、うっとりと目を閉じている。その口元には前脚が添えられていた。 「うわーうわー! かっわいいー! なにこれ天使? 妖精?」 「そうかもしれません。血統書はないのですが、ステラさんはネザーランドドワーフに近いんだそうです。もうその響きからして妖精に違いありません。羽が生えて飛んで行ってしまったらどうしましょう」 「は~、いいなあ。もう大分、真澄になれてるんだね」 「最初よりはかなり。ですが、晴さんのようにはいきません。寂しがっているようですし」  真澄が帰宅すると、ステラがケージのドアをガリガリと引っかいていることがあった。  しかし帰宅したのが誰かわかると、途端に大人しくなる。玄関が開く音を聞いて、ステラは晴が帰って来たと思ったのかもしれない。真澄はそう思っている。 「そっか……。体調崩さないか心配だね」 「ええ。ですが食欲は旺盛ですよ。俺も晴さんも心配してたのですが、朝晩のご飯の時間になると催促されるくらいです」
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