71人が本棚に入れています
本棚に追加
/88ページ
音から察していた通り、やはりステラがご飯皿をつつき回している音だった。
真澄に気づいたステラは、立ち上がってドアに前脚をかける。まるで主人を慕っているかのような健気なポーズだった。しかし真澄は、この時のステラの頭にはご飯のことしかないと知っている。
「おはようございます。ステラさん」
ケージのドアを開けると、ステラは急かすようにバタバタと跳ねた。
真澄は空っぽの皿を取り出し、ペレットを入れて戻す。すると「待ってました!」と言うように、ステラは皿に顔を入れてがっついた。勢い余って前脚まで皿に入ってしまっている。行儀は悪いが可愛いから仕方がない――と、真澄は毎朝毎晩思っている。
ペレットの次は牧草を2種類入れて、糞の状態をチェックする。これで朝の世話は終わりだ。
さて電話――と、真澄はスマホを再び手にした。
しかし「いやいや、まだ早い」とスマホを置く。昨日も晴から連絡はなく、真澄からもしなかった。鳴らないスマホを気にしている自分が馬鹿らしくなって、真澄はついに電話をかけた。
1コール、2コール、3コール――……。
呼び出し音が鳴るが、なかなか出ない。かけ直そうかと思った時、プッと音がした。
『ふぁい、もしもしぃー……?』
最初のコメントを投稿しよう!