〈7羽〉

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 晴の声は、まさにたった今起きましたという声だった。吐息交じりの声はまるで耳元で囁かれているようで、真澄の背筋がシャキンと伸びる。 『ますみぃ?』 「おはようございます、晴さん。まだ寝てたんですか? もう小学生だって起き出す時間ですよ」 『ねえねえ、知ってた? 僕、大学生。必修じゃない限り1限の講義は極力履修しない系の大学生。それで、どうしたの? ステラになにかあった?』 「いいえ、ステラさんはすこぶる元気です。ああ、あとで写真送りますね」 『ありがと。じゃあ、どうしたの?』  晴は噂について触れる様子も気にする素振りも見せない。もしや、と真澄は察する。 「晴さん、聞きましたか? 俺が、小悪魔でものすごくエロい性悪女に捕まったって噂」 『あー、あれね! 聞いた聞いた!』  晴の弾むような声に、真澄は確信を深める。 『ありえないよねー! 真澄がそんな人に捕まるなんてヘマ、するわけないって。今はステラに夢中なんだしさー』  真澄は一晩かけて作った数日分のタイムスケジュールが、すべて無駄になったことを悟る。パソコンの前に移動して、速やかにデータをゴミ箱に入れた。ゴミ箱の中からも削除する。 『どうせ、鈴井くんが勘違いして吹聴したんでしょ?』 「素晴らしい。大正解です」 『わーい、賞品は?』 「昨日駅前でもらったポケットティッシュです」 『どうもありがとう。すごくいらない』  晴の笑い声が真澄の耳を擽る。一晩の労力は無駄にしたが、まあ良いか、と思えた。 『せっかくだから、その人は金遣いが荒くて1度着た服は2度と着ない主義で、寝た男の数は星の数ほどって付け足しといたよ』 「なにしてくれてんだ」
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