〈1羽〉

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 1人暮らしをしてる晴の家で、晴の匂いと所有物に囲まれて、家出しそうになる理性と戦いながら悶々とした1週間過ごすなんて――。 「新手の嫌がらせかなにかですか?」 『言うと思ったけど! 違うからね! ちゃんとした理由があるんだってば!』 「俺があなたの家で、1週間も暮らしていいと思えるほどの理由とは一体なんです?」 『うさぎってさ、繊細な性格の子が結構多いんだ。だから環境が変わると、ご飯を食べなくなったりして……。犬猫と違って食い溜めもできないし、1日でも食べなかったら、おなかの動きが悪くなって本格的に体調を崩しかねないし……。だから、せめて慣れた家で見ててほしい。ねえ、ダメ……?』  今の真澄は知る由もないことだが、人が思う以上に、うさぎにとって『食』は大事なのだ。  基本的に、うさぎは食いだめができない生き物だ。それはうさぎの腸が繊維質がないと動かないことが関係していた。繊維質とは、干し草やペレットなどのうさぎのご飯全般を指す。  当然、食べなければおなかの動きは悪くなる。すると腸内の食べカスが異常発酵し、ガスがたまってしまう。  おなかが苦しくて食べられない。だから腸が動かない。そして余計ガスがたまる――という、まさに悪循環が起こる。  更に、1日食事をとらないだけで脂肪肝という病気になっていく。  栄養が滞ると、体はどうにかエネルギーを得ようと全身に散らばった脂肪を肝臓に集める。しかし全身から集まってきた脂肪を処理しきれず、肝臓の機能が低下してしまう。  繊維質が常に供給されてないと、腸内細菌のバランスが崩れてしまう。悪玉菌が増えて、それが一定量を超えると毒素などをばらまく。そして食欲が――以下略。  少し食べないだけで、とんでもない負のスパイラルに襲われることになるのだ。
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