71人が本棚に入れています
本棚に追加
/88ページ
「お前ってさー、淡泊っつーか、なんというか。晴といて、ドキドキソワソワ的なの感じねーのかよ?」
「これでも、結構ドキドキソワソワキャッキャウフフってしてますよ。顔に出ないだけで」
「わっかりずれーんだよ。そういや、盲腸で倒れた時も倒れるまでケロッとしてたよな。ほんっと、うさぎ並に無だな、お前」
とんでもない、と真澄は大真面目に首を横に振った。
「俺はあんなにキュートじゃないです。それに、慣れたら結構わかりますって。怒ったら目を見開きますし、リラックスしてる時はぼんやりしてます」
「ふーん」
真澄はスマホを出そうとしたが、鈴井に手で制されてしまった。先手を打たれ、舌打ちする。
「イライラしてるときはわかりやすいんだけどな、お前。今とか」
「そこまでイライラしてませんよ」
「イライラじゃなかったら、なんか……今、地味にへこんでるか?」
真澄の目がかすかに揺らぐ――。
「そんなことは」
ないこともない、は省略した。本を片づけ、真澄は席を立った。
「もう講義が始まるので、失礼します。どら焼き、ごちそうさまです」
「おー」
もうすぐ講義が始まるのは嘘ではなかったので、足早に廊下を歩く。
歩きながら、真澄は今朝晴と話したことを思い出した。
『あのさ、真澄ってさ好きな人いんの?』
〈続〉
最初のコメントを投稿しよう!