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〈8羽〉
〈8羽〉
――夜。
「『好きな人いるの?』ですって。どう思いますか、ステラさん」
真澄はステラに手からペレットを与えていた。手を皿代わりにするのではなく、1粒1粒、指で摘まんで与えている。煩わしさより食欲が勝ったステラは、真澄の指先を熱心に追っていた。
「理由を聞いたら『僕の友達が真澄のこと好きって言ってて~。可愛くて性格もいいんだけどどう~?』だそうです。あ、今の声真似ちょっと似てません?」
カリカリ、ポリポリ。ステラの歯がペレットを砕く良い音がする。
「好きな人がいるか聞かれたら、そりゃ少しは期待するじゃないですか。その期待が速攻で打ち砕かれてしまったわけです。まあ、そんなことだろうと思ってはいたのですが」
夕食分のペレットを食べ終えたステラは、「もっとないの?」と言わんばかりに真澄を見上げた。
真澄はステラの丸い鼻面をつつく。ふんすふんす、鼻息とヒゲがこそばゆい。
「俺がなんて答えたと思いますか? 茶色くて、丸くて、ふわふわで、バナナと小松菜が好きな食いしん坊って答えました。あなたのことですよ、ステラさん。なんだか利用したみたいで、すみませんでした」
ステラと答えた真澄に、晴も大きな声で「僕も!」と言った。顔を見なくても、晴がどんな表情をしてるかわかるような声だった。
そのあとすぐに、晴が誰かに呼ばれてしまい、通話は終わってしまった。そして真澄はとぼとぼと大学へ向かったのだ。
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