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「俺もバカですよね。それにつきあった晴さんは、もっとバカですよ。……晴さんのことが好きです。多分、一生」
真澄はステラを腹の辺りに引き寄せ、脇腹をくっついて仰向けになった。ステラの毛がさわさわと心地よい。
「あなたとこうしていられるのも、あと4日くらいですね」
およそあと4日で、晴が帰ってくる。
それはステラにとって嬉しいことで、晴に会いたい真澄にとっても良いことだった。けれど、晴が帰ってきたら、真澄はもうこの家には帰ってこられなくなる。
「また会いに来ていいですか? でも、あまり頻繁には来れないですかね」
どう思いますか、と真澄はステラを見た。しかしステラはどこ吹く風。だが反応の薄さに慣れた真澄は気にしない。
「あなたと話すの、結構好きなんですよ。……まあ、一方的ですが。鈴井さんが知ったら、きっと腹を抱えて笑いますね。でもね、いるのといないのとでは、大違いなんですよ。ステラさんのために早く帰らなくては、そう思えるのが嬉しかった。それで……」
そこで、真澄は言葉を切った。込み上げた感情を飲み下し、はあっと息を吐く。空気の揺れに反応したのか、ステラの鼻がひくひくと動いた。真澄は微笑みをこぼし、踏ん切りをつける。
「それで、俺ね、気づいたんですよ。きっと、俺はずっとずっと、寂しかったんです」
誰もいない、1人きりのがらんどうのような家を思って、真澄は悲しい気持ちをどこにもやれないでいる。
〈続〉
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