〈1羽〉

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「まあ、可愛いうさぎさんのためなら仕方がないですね。あなたの家で、責任持って面倒見ましょう」 『ありがとう!! 恩に着るよ真澄! うちの子はスペシャルミラクル可愛いからね。期待してて!』 「はあ。あなたの「可愛い」がどの程度あてになるのか」 『ほんとだって! ねえ、うち来たことなかったよね。明日、×××駅に9時に待ち合わせでいい? 迎えに行くから』 「ええ、はい。わかりました。それでは、また明日」  プッと通話を終え、真澄は食卓の下で小さくガッツポーズした。勢い余って膝を天板の裏にぶつけ、豆腐の味噌汁をこぼしてしまう。  これまで共通の友人達と遊んだ際、真澄も晴の自宅に誘われたことはあった。  しかし毎回照れくさくて「人が住めるような部屋なんですか?」とかなんとか、悪態か鉄拳で返してしまっていた。  だが明日は、うさぎの面倒をみるためという大義名分がある。是非来てくださいとお願いされてる立場である。  おっしゃー! と叫んでしまいたい気持ちは、すっかり冷めてしまった夕飯と一緒に飲み込んだ。そして真澄はそそくさと10日間分の泊まりの準備をはじめた。
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