〈9羽〉

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『僕だって早く帰りたいよ!! 真澄のバカ!』  プッツリ。そこで、通話は一方的に切られてしまった。  スマホ画面の『通話終了』を見ながら、真澄は額を押さえて呻いた。やってしまった、と。  真澄は飛び跳ねていたステラに膝でにじり寄り、抱きあげた。耳と耳の間に鼻先をうずめる。息をすると、牧草の良い匂いがした。 「やってしまった……」  ぎゅう、とステラを抱きしめる。 「……ステラさん。晴さんがあんなに怒るのって珍しいんですよ」  晴が大切に育てていたから、ステラは人を信用することができる。晴にとってステラがどれだけ大切で、大きな存在であるかわかっていて、言ってしまった。ステラが晴のことを忘れてしまう、だなんて。 「頭を冷やさなくてはいけませんね」  真澄はステラをケージに戻し、床に落ちていた穂先をゴミ箱に捨てた。 ◆◇◆◇◆
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