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『あのさ、さっき元カノから聞いたんだけど』
「ああ、ついに『元』になったんですね」
『そーだよ! で、元カノから聞いたことをお前の耳にも入れておいてやろうと思って』
鈴井は声を低くし、深刻そうに言った。しかし真澄は大したことはないだろうと思って、手にしていたどら焼きに口をつける。
『晴のやつなんだけど』
「……晴さん?」
真澄はどら焼きから口を離した。先ほど怒らせてしまったことを思い出し、しゅーんと無表情で落ち込む。
『おお。晴のやつ、今は父方のじーさんの家に行ってんだろ?』
「そうですが」
『オレの元カノで、晴の友達から聞いたんだけどな。晴のそっちの家って金持ちで、地元じゃ結構有名なんだと』
「はあ、そうなんですか。それで?」
続く鈴井の言葉に、真澄は手の中のどら焼きを落とした。
『あいつ、お見合いしてんだって』
〈続〉
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