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◆◇◆◇◆
「家族の中に俺の居場所はないんです」
真澄がそう言ったのは、中学2年のクリスマスイヴだった。
街は緑と赤で溢れ、世界全部がちかちかと光っているような夜だ。クラスでのクリスマス会は日が落ちたころに解散した。家の方向が途中まで同じな2人は一緒に帰っていた。
晴と真澄は2人で歩いていた。しかし話を切り出した時、真澄は晴のことを見ていなかった。小さな子供を真ん中に歩く家族連れを見つめていた。
「どういう、意味?」
晴に向かって言ったわけではなかったのかもしれない。それでも、晴は聞き返さずにはいられなかった。
晴にとってクリスマスイヴは、昼間は友達と過ごし、家に帰れば家族と過ごす日だ。
どこか浮かれた調子で歩く人、特別美味しいわけでもないのに食べたくなる骨つきチキン、サンタの砂糖菓子の乗ったホールケーキ、正体を知ってからも来てくれるサンタクロース。目に映るみんなが幸福そうな顔をしている。晴にとって、クリスマスイヴはそういう日だった。
「そのままの意味です。血の繋がった家族はもういません」
「真澄は、誰と暮らしてるの……?」
のっぺらぼうが口を開く。
「赤の他人」
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