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◆◇◆◇◆
日曜日――。
晴が都会を離れて8日目になる。初日には新鮮に映った一面のキャベツ畑も、1週間もたてば日常の一部になる。24時間営業のコンビニも全国チェーンのコーヒーショップも、近隣にはなかった。
代わりにあるのは、畑、山、畑、畑、たまに民家、また畑。あとは川。
青々とした畑の脇の土手に座り込む晴の背中を、午後のうららかな日差しが温めていた。晴は鳴らないスマホを大事に抱えている。
「バカ、はないよなあ……」
晴は、昨日の昼間に八つ当たりしてしまったことを気にしていた。逆に真澄に「馬鹿」だの「粗忽者」だのと言われても、「はいはい、そうですね」と大して気にしない。言いなれていないから気になるのかもしれなかった。
「あー、帰りたーい!」
晴は寝転び、手足をばたつかせた。畑仕事をしている隣の家の吉田さんが「なしたー?」と声をかけてきた。手を振って「なんでもなーい!」と返すが、なんでもないわけじゃない。
ステラと真澄は仲良くやれているようなので、その点の心配はしていなかった。
真澄の言う通り、このままだとステラに忘れられてしまうかもしれない。家に帰ってステラに触ろうとして逃げられたら泣いてしまう。真澄の後ろに隠れてしまったら、号泣する自信がある。
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