〈10羽〉

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 癒しを求め、晴は暇を見つけてはスマホを眺めていた。  キャベツ畑もミツバチもミミズも蝶も、晴を癒しはしない。夜になればカエルがゲコゲコと大合唱し、祖父の家の薄い壁では心もとなかった。その上、風が吹けば近くの牧場の臭いが流れてくるので、空気が美味しいかどうかも微妙であった。  真澄から送られてくる動画や写真こそが、晴を癒している。  ぴょんぴょんと飛び跳ねるステラの動画を見る。ステラは少しどんくさいところがあって、はしゃぎすぎると着地に失敗して転んだりすることがある。そのたびに、真澄のほとんど吐息のような笑い声が入っていた。 「……ん?」  動画が不自然に止まったと思ったら、着信画面に切り替わった。表示された名前を見て、晴は跳ね起きる。電話の相手は真澄だった。 「もしもし、真澄?」 『ええ、俺ですよ』 「……詐欺?」 『あなたの大切なステラさんは預かりました』 「誘拐犯のバイト始めたの?」 『失敬な。ところで、晴さん今どこですか?』 「どこって……吉田さんの家のキャベツ畑?」  いくら見渡せど、目印になるようなものはないのだ。地図アプリで見ると、この辺一帯が緑で覆いつくされているほど。 『そうですか。……そこで首を洗って待ってろ』  それきり、電話は一方的に切られてしまった。 「はあ……?」  スマホを見つめ、晴は首を傾げた。  待ってろ、の意味を考える。まさかここに来る気――なわけがない。今からここに来るとなると、夜になってしまう。夜はステラの世話があるから外出は控えなければ――。
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