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シャワーを浴びた真澄が寝る支度をしていると、『ぴろり~ん』とスマホが鳴った。今度は電話ではない。晴から、画像と共にメッセージが送られてきた。
『この子がステラ! 10カ月ちょっとの女の子なの。可愛いでしょー? よろしくね!』
メッセージと共に送られてきたのは、晴とうさぎのツーショット写真だった。
真澄の想像より耳の短い、明るい茶色のうさぎ――ステラが、晴の腕の中にちょこんと愛らしくおさまっている。
横を向いているステラの目はツヤツヤと黒く、巨峰のようにまん丸で大きかった。目の周りと顎、腹のあたりの毛は白いが、立ち耳は少し黒っぽいようにも見える。首の後ろの毛は他よりもやや黄色っぽく、写真でもわかるほどほわほわしていた。
スペシャルミラクルかはともかく、先ほどのテレビの子うさぎと同じくらい可愛い。と、無表情ながら真澄は思う。
晴は、真澄が見たことがない顔をしていた。真澄に向けられたことのない、愛情に満ちた顔。ステラが愛おしくて堪らないのだと、その目が雄弁に語りかけてくるようだった。
返信を送ろうとして、しかし打っては消し、打っては消しを繰り返す。
見返りになにを要求してやろうか。ああでもない、こうでもない。でも、本当は見返りなんていらなかった。うそ。ほんとは少し、ほんの少しでいいから、ほしい。
しかし何度も打ち直すうちに面倒になってしまってしまい、真澄はメッセージアプリを閉じた。いつも、なかなか返信できないでいる。
無表情で先ほどのツーショットを壁紙に登録する。スマホを手にしたまま、真澄は普段恥ずかしくて誰にも見せられない顔をした。
「ああ、明日が楽しみですね」
布団に入って目を閉じた。そわそわと浮かれっぱなしの体が布団から浮き上がって、天井まで届きそうだ。
そんな調子で一向に眠気は訪れなくて、真澄は羊の代わりにうさぎを数える。
うさぎが1羽、うさぎが2羽、うさぎが3羽、うさぎが4羽――。
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