〈11羽〉

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〈11羽〉

〈11羽〉 「晴さん、あなたが好きです」  真澄は晴が好きだ。  鈴井から『晴がお見合いする。家の方が乗り気らしくて、帰ってこれないかも』と聞かされ、速攻で飛行機の予約をした。そのくらい、晴が好きだった。  だが常にドキドキしているだとか、晴がやたらキラキラし見えるだとか、そういう風には思わない。 「す、すきって……」 「はい。好きです」 「誰が」 「俺が」 「……誰を?」 「晴さんのことが好きです」  会えないと無性に会いたくなって、もっと一緒にいられたら、と真澄は思う。  毎日が夢のように楽しくなくていい。なんでもないありふれた日々の中、そこに当たり前のように、晴にいてほしい。それだけだ。それだけで、嬉しい。 「好き好きって、だって真澄、なんで……」 「なんで? それは具体的にどこを好きかってことですか? まず頭部からいくと――」 「頭部!?」  ふっと風が吹き、堆肥の臭いが強くなる。真澄はそれで自分がキャベツ畑にいることを思いだした。 「あ、しまった。時間が」 「え!?」 「ステラさんにご飯あげるためには、もう帰らないといけないので」 「え、ちょっと、真澄!?」 「あなたも、お見合いなんてしてないでさっさと帰って来なさいよ」 「え……?」
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