71人が本棚に入れています
本棚に追加
/88ページ
〈11羽〉
〈11羽〉
「晴さん、あなたが好きです」
真澄は晴が好きだ。
鈴井から『晴がお見合いする。家の方が乗り気らしくて、帰ってこれないかも』と聞かされ、速攻で飛行機の予約をした。そのくらい、晴が好きだった。
だが常にドキドキしているだとか、晴がやたらキラキラし見えるだとか、そういう風には思わない。
「す、すきって……」
「はい。好きです」
「誰が」
「俺が」
「……誰を?」
「晴さんのことが好きです」
会えないと無性に会いたくなって、もっと一緒にいられたら、と真澄は思う。
毎日が夢のように楽しくなくていい。なんでもないありふれた日々の中、そこに当たり前のように、晴にいてほしい。それだけだ。それだけで、嬉しい。
「好き好きって、だって真澄、なんで……」
「なんで? それは具体的にどこを好きかってことですか? まず頭部からいくと――」
「頭部!?」
ふっと風が吹き、堆肥の臭いが強くなる。真澄はそれで自分がキャベツ畑にいることを思いだした。
「あ、しまった。時間が」
「え!?」
「ステラさんにご飯あげるためには、もう帰らないといけないので」
「え、ちょっと、真澄!?」
「あなたも、お見合いなんてしてないでさっさと帰って来なさいよ」
「え……?」
最初のコメントを投稿しよう!