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晴がケージを開け、飛び出て来たステラを抱き上げた。いつも真澄はステラを抱き上げる際は、万が一がないよう慎重に抱き上げる。しかし、晴は無造作にひょいっと抱き上げた。
「ただいま、ステラ! 会いたかったよー!」
晴がすりすりと頬ずりをしても、ステラは逃げなかった。すんすんと、晴の髪の匂いを嗅いでいる。
「ステラ―! スーちゃーん! 天使! 妖精! かーわーいーいー!」
その間に、真澄がステラの朝食の用意をした。
食い意地の張ったステラだが、今日ばかりは晴の腕の中でおとなしくしている。晴もそのことに気づいていて、ステラの額に鼻先を埋めた。すー、はー、深呼吸。そしてくしゃみ。それでようやく、晴はステラを解放した。
やれやれ、というようにステラはケージに戻ってご飯皿に顔をつっこむ。
晴はむずがゆい鼻を擦りながら、真澄の肩に頬を寄せた。
「真澄って、うさぎっぽいよね」
「無表情なところがですか? 鈴井さんにも言われましたね」
「なんだ、見る目ないなあ。僕には真澄の顔もステラの顔もちゃんとわかるよ」
真澄も晴の方に首を傾けた。こつん、と頭がぶつかる。
「ねえ、真澄は言ってくれないの?」
「なにをです」
「またまたー。とぼけちゃって」
「……就職決まって大学卒業するまで待っててください」
「2年近くも? 遠いなあ」
「すぐですよ、すぐ」
だって10年近くも片想いをしていたのだから――。
「じゃあ、それまでこの間聞きそびれた僕の好きなところ、教えてもらおうかな」
「そうですね。では、まず頭部からいきますと――」
〈続〉
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