〈13羽〉

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「意思疎通ができてないだけだと、晴さんはわかってたんですか?」 「んーん。でも、真澄って食べるの好きだし、味覚がしっかりしてるでしょ?」 「そうなんですか?」 「そうなんです。それって、美味しいご飯を食べて大きくなったからだと思う。きっと美味しいご飯作ってくれてたお継母さんなんだなって思って。まあ、それだけ」  血の繋がらない家族の中に居場所がないと、自分だけが1人なのだと、真澄はずっと思っていた。けれど、家族はずっとそこにいたのだ。目を瞑って耳を塞いでしまっていただけで、家族はいてくれていたのだ。  あの頃の自分にこのことを教えてやりたい、と真澄は思わない。今で、良かった。今だから、良かったのだ。 「そういえば、あなたのご両親にも挨拶に行かないと」 「あー……。真澄さ、田舎まで来た時、辻倉さんに軽トラで送ってもらったでしょ?」 「ええ。よく知ってますね」 「あの人ね、僕の従兄弟」 「はあ!?」 「あと、あそこ吉田さんの家のキャベツ畑だったでしょ?」  堆肥の臭いを思い出して、真澄は顔を顰めた。堆肥の臭いのたちこめるキャベツ畑で告白はないだろう、と自分に幻滅する。 「吉田さんとこの奥さんは、歩くスピーカーと言われるほどおしゃべりで噂好きでね。あの辺の人全員が、あの時の状況を見てたみたいに詳しく語れるだろうよ」 「は……?」 「もちろん、僕の親戚一同も」  真澄は自分の頭を撫でていた晴の手をガッと掴んだ。あまりのことに動揺し、ミシミシと締め上げてしまう。
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