〈13羽〉

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「そのうち、父さんあたりが乗り込んでくるかも――ちょ、イタ! 痛いって真澄さん!?」  晴の悲鳴に我に返り、ぱっと手を放した。赤くなってしまった場所を、労わるように撫でる。 「まあ、なるようになるさ」 「……殴られる練習をしておきます」 「そのときは、僕が返り討ちにしてやるよ」  真澄の記憶によれば、晴の父は恰幅が良い。貧弱でもやしっ子、絹ごし豆腐とまで呼ばれた晴など、鼻息で蹴散らしてしまえるだろう。 「俺も、話をしたいです。あなたの家族と」 「僕が、真澄の家族と話したように?」 「はい。殴られても、どういう結果になっても、話がしたい。なにもせずに、気づかないままで過ごすのは、もうごめんです」  晴のようになれるとは、真澄は思わない。わかりあうことはできないかもしれない。別れろと言われるかもしれない。それでも、話をしよう。話がしたい。 「あとさ、もう1つ気づいたんだけど」 「……今度はなんですか。これ以上動揺したら、うっかりあなたの手をへし折りそうです」 「お願いだから思いとどまって。今、動物病院のステラの名前って『朝比奈ステラ』なの」 「そうですか」 「もし、もしだよ? なんやかんやあって『宇佐木ステラ』になったらさ、やばくない?」 「それは……」  真澄と晴は、この世の幸福すべてが詰まったような顔で眠るステラを見下ろす。そして、ほとんど同時に叫んだ。 「可愛すぎか!」  仲睦まじくぴったりと身を寄せ合う2人を、ステラだけが見ていた。 〈おしまい!〉
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