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〈2羽〉
〈2羽〉
真澄が着替えなどを詰めたボストンバッグを抱えて待ち合わせ場所に行くと、すでに晴が待っていた。
遠目に見えた自分を待つ姿に、真澄は気を良くする。
「お待たせしました。さっさと豚小屋に案内してください」
「会って早々ひど! 豚小屋じゃないからね、うちは!」
「それもそうですね。ステラさんに失礼でした。すみません。うさぎ小屋ですね」
「ぶん殴るぞ」
「どうぞ。ついうっかり、反射的に蹴り返しますが」
晴の家は、駅から歩いて15分ほどの場所にあった。7階建ての白いマンションで、新築ではないが、まだ真新しい。
途中にはドラッグストアとコンビニがあり、スーパーもすぐ近くにあった。駅前もそれなりに栄えており、電車に乗って買い物に行く必要はまずないだろう。
晴の言う通り、マンションは真新しく、汚れのない壁は文句なしに白かった。晴らしい、と真澄は口に出さず思う。
「いい場所住んでますね。晴さん」
「真澄の家が古すぎるんだと思うけど」
「知人からタダ同然で借りたんですよ。曰くつきの物件というやつで」
「まさか、幽霊が出るとかそういう?」
「まあ、そんなとこです。一軒家で広いですし、結構いいですよ。1人暮らしなのに、2人暮らしの気分が味わえます」
「げっ、ガチのやつ! 夏は冷房入らずだったり?」
「冗談ですよ。まあ、曰くつきなのは確かですが」
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