契約

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それを聞いた彼…ウルキオラは、 何か考え込んでいる様子だった。 そして、結論を出したのか、口を開く。 「ハッキリ言って、俺がお前を護るメリットは 存在しない。常ならば、断るところだ。」 やはり…と私は落胆した。 大きな力を持つ存在を、 簡単に護衛に出来るはずも無かったのだ。 諦めようと思ったその時だった。 「だから、交換条件だ。」 その言葉に、希望の光が見えた気がした。 「何をしたら良いの?」 私に出来ることなど、高が知れているだろうが、 出来る範囲であれば、全力で取り組むつもりだ。 一言も聞き漏らさないように、耳を傾けた。 彼は言った。 「俺に心という物を教えろ。」 「………へ?」 「俺は消滅する前に、初めて心に興味を持った。 だが、知ること無く…消滅した。 だから、お前を護る代わりに、俺に心を教えろ」 暫く私は固まっていた。 そんな事で良いのか? もっと無理難題を突きつけられるかと思ったら、 心を教えろだって?返事は勿論決まっていた。 「分かった。一気に教えられるものでは無いから、 私と一緒に過ごす中で、 少しずつ教えていく事になるけど、良いかな?」 「構わん。」 私達の中で、契約が成立した。 私はウルキオラに心とは何かを教え、 ウルキオラは私を護る。 「纏まったみたいだね。」 命理が笑って言った。 「それじゃ、行ってらっしゃい。」 「……え?」 そして次の瞬間、私は落ちた。 比喩でも何でもなく、落ちたのだ。 足元に開いた、黒い穴の中に… 「嘘でしょ~!!」 思わず叫び声をあげながら、私は落下して行った。
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