新顔の男

2/4
前へ
/60ページ
次へ
   天気予報士が梅雨入り宣言をしたその日、濡れた傘を店の入り口でビニール袋に詰める作業以外はいつもと同じ朝のはずだった。  同じオーダーを手に持った同じメンバーがそれぞれの定位置に腰を下ろす。  でもその日は違った。  スマホいじりの眼鏡男の定位置に先客がいたのだ。  一瞬男はたじろぎ辺りを見回すと、トイレに近い隅の席に腰を下ろした。  先に自分の定位置についていたいつものメンバー達はその姿を視界の端に置きながら、ほんの少しだけトイレの近くに同情する。  眼鏡男の定位置をぶんどったのはスーツに身を包んだ男だった。
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加