第一章

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============= この世は誰かの夢見る夢であり、世界とは嘘である。 ============= その話を聞いて最初に抱いたのは、形容しがたい程の憤怒だ。取る足らない戯言と通り過ぎて、そして幾度の繰り返しの後に立ち止まった。 俺が生まれた世界のありとあらゆる知識を得、ありとあらゆる事を経験し、ありとあらゆる事を試しこの繰り返しから脱出しようした。その全てが例外なく失敗し、こうして繰り返しているのだ。 この様なふざけたオカルトを信じるのは業腹だったが、しかしそれ以外の全てが成功しなかったのも事実である。 信じてみたものの八方塞がりである事に変わりは無かった。己の存在が誰かの夢に出てくる一登場人物だと、自分で信じている様なものだ。気が狂いそうになった。これまでの繰り返しが無意味に思えて、途轍もない無気力が心を覆い尽くしていった。 オレが誰かの夢に出てくる一登場人物だとしても、こうして思考する己は決して偽りでは無い。そう信じるしかなく、そう信じて足掻きに足掻いた。結局の所、辿り着いたのは夢の中から夢の主を叩き起こし、なおかつ夢が消えても己を保てる様にする。なんとも滑稽でキチガイの様な結論に行き着くしか無かった。 その結論に行き着いてしまえば、後はただただ達成しようと邁進するだけだ。 そして結果的にオレは誰かの夢を脱する事が出来た。多くは語らぬが夢の主である白痴の神との戦いは、それはそれは熾烈を極め数億の繰り返しを必要とした。
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