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お開きになった後、降車駅が同じ和寛が私と一緒に帰ることになった。
「なんか、友恵がすごく綺麗になっててびっくりした」
星空を見上げながら、ほんのりと笑いを浮かべて和寛が言った。
「そんな事言えるようになったんだ」
「俺も、大人になったからね」
今度は私の顔を覗き込んだ。
心臓が激しく動くのがわかり、たまらず俯いた。
「咲、幸せそうだったね」
ごまかすように、話題を振った。
「咲は一番早く結婚するとは思ってたけど、まさかこんなに早くとはな」
「和寛は?彼女いないの?」
あまりに普通に聞けたので、自分でもびっくりした。
こんな質問をしたのは初めてだったからか、和寛は「えっ?」と大きな声を出して驚いた。
「……いないよ。大学はいろいろ忙しかったからなあ。職場はお姉様方ばっかりだし」
「そっか」
タクシー乗り場の列はまばらで、駅まで歩く人もほとんどいなかった。
夜道に二人の足音だけが響く。
数日の間に一気に秋も深まり、カーディガンだけでは寒くて手先が冷えていた。
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