女子カイダン

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「もう、我慢できないんです」  目にいっぱい涙を溜めながら、菊ちゃんはキリと私を見据える。  何だろう。彼女を憎む気持ちはない。恨む気持ちもない。同情心は、ある。「骨抜きにされてかわいそうね」と思う気持ちだけ。 「私、ご主人を見るたび、つらくて」  同僚ですもんね。嫌でも目に入るでしょうね。 「奥さんとメッセのやり取りをするたび、気持ちが抑えられなくなって」  わなわなと肩が震えている。  彼女は興奮で。  私は若干の怒りで。 「私……好きなんです」  どうして、こんな、若い子に手を出したの。若くて、かわいい子。本気にさせちゃかわいそうでしょう。  今、この場に夫がいたら、恨み骨髄に徹して、きっと殴っていたに違いない。二回目は許しがたい。 「愛しているんです。だから、別れてください、ご主人と」  ほら、涙が一筋溢れちゃった。こんなになるまで追い詰められちゃって。  かわいそうすぎる。  この子も、私も。
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